昨夜、飼い猫1匹が脱走したらしい。私は気づかずに眠ってしまった。小雨のちらつく
深夜過ぎ、玄関の扉を何かの拍子で開けていたのだと思う。厳密にいうと、開いていた
のに気づかなかった。ばかばかばか。走り去ったドンは、黒猫、さかり真っ盛り。共に
暮らしはじめてからもうかれこれ半年近く経つのに、ロクに抱っこしたこともない。人
間とものすごく距離を置きたがる性質なのだ。彼は私が眠るのをみはからいそろーっと
足元に乗っかり爆睡する。そして、朝方、本人の意識が朦朧な時にだけ、足の指でだけ
触らせてくれる。手はダメ。先端恐怖症?いや、分からない。どんな関係や。
猫様状態。
うちに来た頃は洗濯機の後ろや、ベッドの下に隠れてばかりで、ロクに目も合わせて
くれなかったので、これでもかなりコミュニケーションはとれている方だ。
最近では食事時、名前を呼ぶと飛んで走ってくるようになった。がしかし、依然として
埋まらない微妙な距離は健在。
今朝起きると、奇妙な泣き声が聞こえた。
ミャーでなくヌミャニュヌア〜。なんじゃその声は。異変を気にも止めず、お腹を空か
しているのかと思い、いつものようにペットフードの袋を上下に振ってがさごそ音を鳴
らして合図。他2匹がダーッと階段を駆け下りて来て食らいつく。甘える。それなの
に、ドンだけ来ない。変な泣き声はさらに大きくなり、それが家の外からだと分かっ
た。いよいよ心配になり玄関の扉を開けると、すぐそこにびしょぬれになったドンがい
るではないか。おいでおいでと手招きしたらアッという目をして同時に、まったく反対
方向に走って逃げていってしまった。おーい、そっちじゃないでこっちやで。時すでに
遅すぎ。
ドーン、ドーンと控えめな大声で名前を呼びつつペットフードの袋を揺らしつつ、家の
周りを探し歩いたが、一向に気配がない。ヌミャニュヌア〜も聞こえなくなり、困惑。
帰ってくるだろう、帰ってくるはずという根拠のない確信はあった。こうなったらお祈
り。あがくのはやめにしておいた。
夜になり、庭から鳴き声。今度はモゥワァ〜、ミュ。寒かったのだろう。鳴き方もおか
しくなっていた。2匹の家猫がドンの気配に気づき、部屋の中を巡回し始める。
ミャミャ。ガリガリ。ミャオーン。モゥワァ〜。友の臭いに引き寄せられたのか、ド
ン、玄関前に無事たどり着く。寒かったろうに。腹減ったろうに。
今、半径2メートル以内のふかふかした場所で、疲労回復している模様。気持ちよさそ
うに体を伸ばし、半目でひっくり返って眠っている。ああ、不注意ごめんなさい。おう
ちはあったかいやろ。



