
不況で暗い世の中に笑いの大切さを伝えたいとして刊行された『田辺聖子の人生あまから川
柳』。明治以降の現代川柳100句の選りすぐり。それぞれにお聖さん(馴れ馴れしくも)
の感想つき。かなり面白い。
<命まで賭けた女てこれかいな 松江梅里(ばいり)>
田辺流解釈→つきあっている青年と娘がいて、それぞれの親が反対したが、それなりの形に
なった。町内で、命まで賭けた女だとえらい評判になったけれど、それがあんまり美人じゃ
なくて。
あまりにも短いこの句、短いからこそいろんな想像ができる。まず、命賭けるって、心中で
もしようとしたんか、それとも勝手に死のうとしたんか。惚れてるということなのでしょう
が、頭に浮かぶは演歌とスナック。評判になったのは、2人がバカップルだったからか、お
似合いだっかからなのか。これかいなとは、おそらく期待したほどやなかったということ
で、モデルになった女性には失礼な話やと思いますが、このぶしつけなところが素敵。
小さい頃、よく遊んだ女の子がいて、男はその子がずっと好きやった。その女の子はたいそ
うべっぴんで、大きくなったらお嫁さんにしたいと秘かに男は思っていた。ところが、その
子は、離島に家族ごと引っ越してしまった。「いつか向かえにきてね」と女の子は男に言い
残し、長い年月が経った。その島はあまりにも遠く、唯一の交通手段の船で行っても半日は
かかる。男は仕事をせっせとこなし、思いだけが募っていった。ある日、男は有給休暇をも
らう。(一応、頭の中では昔々なのだけど、有給があることにしてみる)さて、何をしよう
かと暇をもてあましていたところ、女の子のいる島へ会いに行くことを思い立つ。船に乗っ
たはいいが、暴雨に呑まれ、乗客すべて船から放り出される。男は、必死こいて泳ぎ続け、
ようやく島にたどりつく。男は疲れも忘れ、意気揚々とただ女の子の家をめがけて会いに行
く。久しぶりに会った女の子に昔の面影はなく、随分醜くなっていて、男のことすら覚えて
いなかった。なんやこの女(アマ)と腹が立ち、男は家まで泳いで帰った。
理想にことごとく裏切られたパワフルな男がこの句からイメージされました。
この〝女(アマ)〟という言葉の仲間に、〝メス豚〟という言葉がありますが、以前それを
〝メス犬〟と言う男に会ったことがある。豚にも犬にも女性にも失礼とちゃいますか、と
伝えておきました。

倉橋由美子氏の『大人のための残酷童話』は、子供の頃から知っているアンデルセンとか、
グリム童話、日本昔話の登場人物の持つ淫らな欲望、邪悪な心、剥き出しの悪意を描いた
創作童話集。ほんに、えぐい。一寸法師がお姫様の最も女性的な部位に入ったり、上半身が
鱗で覆われ魚の顔をした人魚姫が、王子様に股がり自ら性交したりしてしまう。
20数話ほどの短編、そのひとつひとつの最後のページに教訓が書かれている。
例えば、白雪姫はこうだ。
<教訓 真の愛とは醜いものを愛すること、つまり不可能ということ>
そして、異説かちかち山。
<教訓 狸だって復讐します>
突然、物語が思わぬ方向へ動きだし、あっという間に物語は終わってしまう。ナイフで切る
というより、マントをシャーって翻して突然消えてしまうような、シャープな文体に惹かれ
た。裏の裏の裏がまたあって、永遠に終わらないような思考の深みにはまります。
ところで、お知らせです。近日、友人の印南俊佑氏の出演する舞台が幕を開けます。
獏天フィルム演劇企画部第四公演『カナリア』最終章
『外道ノ國二生マレテ』
ザムザ阿佐ヶ谷にて、4月7日(火)〜13日(月)
彼の演技は、ブラッディマンデイ(TBS)でチラとしか拝見したことがないのですが、
友人という贔屓目でなく、かなり凄みがあると感じました。素敵です。ぜひ。
印南氏のホームページはこちら。
上野公園では、ソメイヨシノがもう咲き始めているそう。


